青森県八戸市で洋服お直しをしているOh!Oh!(ダブルオウ)です。
今回は関東のお客様からのご依頼。
「むかし買ったレザーコートを娘さんのためにリメイクしてほしい」というご依頼です。お品はこちら!
細かく柄が入っているとても珍しいレザーです。肩パットが入っていて、身幅もそで幅もかなり太め、長方形のドシっとしたシルエットがかっこいいですね!襟をあけると、光沢のあるレザーが首元を華やかにしてくれます。
数十年前に購入したとのことですが、状態がとてもよい!このままオーバーサイズで着ても絶対かわいい。
背中や裏地はこんな感じです。
背中のベルトも良いアクセントになってますね!あるとないとでは大違いなやつです。裏地は穴や汚れが少し目立つので、交換が必要そうです。
詳しいご希望は…?
ご希望をヒアリングしたところ、以下のような内容でした。
・当時、数十万円で購入
→私の心の声:こんだけ凝ってたらそりゃ高いでしょう
・形が古く、着なくなってしまった
→私の(以下省略):たしかに形はレトロ
・今っぽくアップデートして、娘にプレゼントしたい
→私:おぉ、いいですな!
・デザインは完全にお任せ
→私:よっしゃ!がんばります!
・いくらかかっても構わない
→私:い、いくらかかっても構わない!?
いくらかかっても構わない!!!
そこまで信じてお任せいただけるのは、職人冥利に尽きます。普段は予算の都合でできなかったことも、やってみましょう!
デザインを考える
娘さんから普段着の写真を何枚かいただき、コンセプトを練ります。
娘さんは何でも着こなせるタイプで、特にかっこいい系が似合います。日本のブランドで言えば、「TAN」「FILL THE BILL」「SACAI」など、とても似合いそう。「LOEWE」も結構好きだとか。たしかにロエベのコートとか絶対似合う。パンツに合わせることが多いそうなので、着丈は長めがよいかな。
攻めたテイストでも似合いそうなので、具体的な方向性を考えます。
コートを眺めていると、なんとなくですが当時の空気感や風格が感じられます。俗に言えばバブリーだけど、渋い。このテイストを、あえて今の時代に強調しつつ、娘さんに似合うクールさやエレガントさを足していくのがおもしろそう、と考えました。
これらのキーワードやイメージを提案書に落とし込み、まずは洋裁職人のセイジと相談します。
縫製上、無理がでる箇所がないか、どのくらいの作業量になるか、などなど、いろいろ話します。
まぁ、実際はその通りに全然いかないんですけどね!(毎回大幅に作業量がオーバーする…)
とにかく、ハイブランドでもなかなかできない、我々だからこそできる手仕事をしていきましょう!
使う素材集め!
足りないパーツを補う生地、どうしようかなぁ。あんまりピカピカのレザーは使いたくないなぁ、雰囲気に合わないし…。と、いろいろ考えた結果、同じブランドの古着を取り寄せることにしました。
あとは、裏地やらファーやら、たくさんのサンプルから悩み悩み、決めていきます。
ファスナーやボタンなどもイメージ合うものを見繕います。
ここまでで、だいたい半月から1か月ほどかかっています。
制作開始!
大掛かりなリメイクは、ゼロから作るよりも工数が多い!特にレザーは難しい!!
1〜2ヶ月経って、少しずつ形になってきました。
途中の写真は一気に飛ばして、前立てとスロートラッチ(チンストラップ)を作っているところです。
前立てにドットボタンを打っている動画。
机の上が散らかってるのはたまたまなんです!ホントだよ!
この後も、腕作ったり、なんやかんややって、トータル3か月ほどかかって、やっと完成しました。
できあがり!
どうでしょう?
バブリーでクールでエレガント!になったと自負しておりますが、いかがでしょうか!
裾の方はこんな感じ。
ゴージャスなサイドベンツ!センターベンツよりも、歩いたときのエレガントさが増します。
裏地は渋いレトロ感あるオレンジです。古いタグも付け直していますよ。
全身のビフォー&アフター。
襟元をちょっと開けた感じの比較写真。
背中も比べてみましょう。ベルトの位置はスタイルがよく見えるよう、上に移動しました。
もともと、背中のベルトは飾りだったのですが、絞り機能をもたせました。絞らないとこんな感じ。
斜めからのビュー。今の服にも合わせやすい印象になりましたね。
襟について補足させてください。取り寄せたコートの襟をあわよくばそのまま使おうと思ったのですが、全然合わず、結局ゼロから形を決めて作りました!(苦労したアピール)
ファスナーはYKKの最高級、EXCELLA(エクセラ)に、バラモチーフの引き手をつけました。こんなところもバブリー。
袖は実用性をもたせつつ、渋く仕上げました。
ボタンを絞ると内側のファーがギューっとなって、大変あたたかいです。
折り返すとこんな感じ。
襟もご覧ください。実はすごいんですよ。ピンクの点線で図示したカーブの端っこ、ファーがなくて下のレザーが数ミリ見えているのがわかるでしょうか?
端っこまでファーにしちゃった方が縫製はめっちゃ簡単なのですが、あえてそうしませんでした。襟全体がファーになると、ちょっとまるーい感じになって、キュート感が増すのです。このコートでは、クールさを出したいので、あえてレザーのエッジを出すことで、キリッと端正な印象に仕上げました。洋裁職人のセイジも、ここを作るのがものすごく大変だったと言っていました。
襟の裏側もきれいですよ!
赤い点線で囲った部分、もとのコートにはない部分なので、すべてオリジナルで作っています。
台襟のステッチは並行、襟の裏側ステッチはジグザグです。トレンチコートと同じ仕様にして、エレガントさを持たせました。
なんと、袖は取り外しできるのです!
ファスナーがセーターなどに直接当たらないよう、見返しをつけてガードしています。
見返しの全体像はこんな感じ。機能面だけでなく、高級感もありますね!
袖のファスナーもYKKの最高級、EXCELLA(エクセラ)。
ノースリーブ状態。かっこいい!
あけてもかっこいい!
横からみると、袖口が大きくあいています。そのくらい、袖がオーバーサイズなのもかっこいいポイント。
襟を立ててもクールでエレガント。首にファーが当たって、めっちゃ気持ちいいはず(さすがに自分では試してない)。
写真は以上です。
お母様も娘様も大変喜んでいらっしゃいました。後日、娘様の着用写真もいただきましたが、「マジで似合っとる…」と感嘆いたしました。皆様にも本当はお見せしたい…!
価格のお話
作り終わってめでたしめでたしと終わってもいいのですが、お金の話も当然気になります。
オーダーメイドのコートが25〜40万円くらいしますが、リメイクはゼロから作るよりも縛りや工程が多いです。さらにレザー特有の工程が増えるので、なかなかの金額になります。デザインや資材・品質管理だけで、10万円以上はする、という感じです。そこに工賃と材料費が別途かかってきます。
お客様側からすると、安くない金額です。それでも、赤字スレスレになることがちょくちょくあります。職人とデザイナーが費やす時間がリメイクになると一気に増えるからです。あと、単純に二人とも凝り性!こだわりすぎ、というのもあります…
それでもやっぱり、リメイクしても使いたい大切なお品をお任せいただけるのは、本当に嬉しいです。だから、これからも続けられるだけ続けていきたいと思います。
と、なんかしっとりした話になってしまいましたが、お品によってだいぶ金額が上下しますので、どうか気軽にお問い合わせください。相談やお見積りは無料ですので!お待ちしております。
Oh!Oh!(ダブルオウ)は、2021年に青森県八戸市でスタートした洋服お直しサービス。洋服好きの親子が、高い技術とデザイン力で、大切なお品をお仕上げしています。おかげさまで、全国からたくさんのお直しをお任せいただいています。